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トラブル続出

家族に内緒で購入した宝石にはトラブルもつきもので、長く宝飾ビジネスにたずさわってきた私もいろいろな場面に出くわしました。ご主人に内緒でワケありの買い物をしたいお客様かどうか、店頭で見分けがつけばトラブルは避けられますが、一人で来店する女性が圧倒的に多い宝飾店の店先で、いちいち「この買い物はご主人に内緒ですか」などと聞くわけにもいきません。あるとき五十代のご婦人がルビーの指輪を買い求めました。しばらくして今度はダイヤをちりばめたプラチナの指輪とペンダントを購入して、前回同様にキャッシュで支払いをしていきました。次第に世間話もするようになって、住所も分かっていましたので信用販売で商品をお渡しするようになりました。私のところのような個人商店では支払いに現金、カードの他に信用販売も行います。信用販売とは、何回かの取引で買い手を信用できると判断して売り掛けで品物を渡し、決済を後にすることです。毎月きちんと売り掛け金の支払いを受けていましたが、突然支払いが止まり二ヵ月ほど経過してしまいました。そこで数回、督促の電話を入れたところ、こんな答えが返ってきました。「主人に内緒で買っているんだから、知られたら困るんです。もう電話はしないで」こちらが逆に叱られてしまったのです。結局、ご主人の知るところとなって残金は支払ってくれましたが、お客様とは縁が切れ、彼女のもとに渡った商品には「トラブルが起こった」という情けないストーリーが刻まれてしまいました。彼女自身もご主人との関係が悪くなったことでしょう。この取引で満足した人は誰もいないわけです。「お客様にパワーを与えられるように」と願って送り出した宝石には嫌な思い出がまとわりつき、取引に関係した人間には、気まずさだけが残ってしまったケースでした。また売り掛けが残ったまま入院してしまった奥さんの場合は、ご主人から「おれはそんな買い物のことは聞いていないよ、女房が勝手にやったことなど関係ない!」と、突っぱねられてしまいました。繰り返しになりますが、こうしたケースで得をする人は誰もいないのです。売り手はお客様を失うだけでなく、店側に過失はないのに悪い評判を流される可能性すらあります。そして買われていった宝石がどう扱われているかを考えると暗濃たる気持ちになります。