嫌な人、とレッテルを貼ると、嫌な人の嫌な部分だけを探そうとする心の働きがおこる。そして嫌な部分をみつけて、「なんて嫌な大なんだろう、やっぱり」と納得する。レッテル貼り心理は心のおちこみの引き金になる心理であり、自分に対してダメな人間とレッテルを貼ると、自分のダメな部分だけに注目し、探し出し、おちこんでいくものなのだ。この「レッテル貼り心理」は我々がしばしば陥りやすい心理現象である。三〇歳をすぎたら嫌、なんとしてでも二〇代のうちに結婚したいという女性の心の中には、このレッテル貼り心理がありはしないか。三〇歳に対して、「曲り角を過ぎた女」「オバサン」「大台にのった女」というレッテルを貼っているのではないか。そのレッテルは、長いこと、女は若いほうがいい、女房と畳は新しいほどいい、とする若さのみを尊重する社会文化的背景によってつちかわれてきたものの名残であるように思う。三十になる前に結婚したい、三十になる前に子供を産みたい、三十になる前に仕事である程度実績を作りたい、とひとつの区切りとして考えてしまう人は多いはずだ。「年齢なんて関係ない、そんなの意識していない」と言う人もいるだろうが、そういう俗世間など超越した人は勝手に涼しい顔をしていて下さい。三十歳。それはやはり、何かのラインではある。(山本文絣『かなえられない恋のために』)しかし、こうした数字のイメージに縛られた結婚は、では実際に問題ばかりかというとそうとはいえない。「VOCE」二〇〇〇年八月号の調査でご一九歳、がけっぷち結婚をした女性にアンケートをとると、二〇代の他の年齢にくらべて幸せで満足と答えている人が多い。そこには、ある種の覚悟とあきらめ、わり切り。などがあるようにもみえる。結婚に対して過剰な期待をしない。自分はもう二九歳なのだから、あとはない、これしかない、この相手しかいない、というがけっぷちの覚悟がかえって結婚に対してありのままうけとめる方向に進んだ可能性もある。「大台にのらないで」「曲角を曲らないうちに」結婚することが重要だから、もっと他にいい人がいるかもと迷っている余裕がないことがかえっていい結果になったともいえる。
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